マズローの欲求5段階説にファッションを対応させてみた。特に何もなかった。
マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説といえば,アメリカの心理学者,Abraham Harnold Maslowが提案した人間が有する欲求のヒエラルキーを示した図である。
図1 マズローの欲求5段階説*1
多くの自己啓発本やビジネス本で引用されているため,ここでの説明はそこまで詳細にではなく,サクッと済ませるものとする。
マズローは人間の欲求は5階層に分けられて,低次の欲求が満たされると高次の欲求へとシフトしていくというものだと提唱している。図1で言うと,ピラミッドの一番下が満たされるとそのひとつ上へとシフトしていく感じ。これを繰り返すことで,最高次の欲求へと到達するのである。
それぞれの欲求は次のように定義される。
(1)生理的欲求
「食べること」,「寝ること」のように生きる上で最低限満たしたい欲求
(2)安全欲求
健康や経済状態の維持,即ち安心や安全に対する欲求
(3)所属および愛の欲求
集団に属したいとか仲間が欲しいというような欲求
(4)承認欲求
集団に於いて価値のある存在であるという認識を得ようとする他者承認欲求
(5)自己実現欲求
自分のあるべき姿に対して,自分の持つ能力を最大限に発揮してそれを獲得しようとする欲求
これらの欲求を満たすことによって人は成長するし,逆にこれらの欲求が満たされていないと様々な問題が起こりうるともされている。
様々な場面で,特に行動心理学の側面からマーケティングなどに応用されることの多いこの欲求5段階説であるが,意味もなくファッションにこれを適応してみることにした。本当に意味がない。
ファッション欲求5段階説
先に紹介したマズローの欲求5段階説に基づいて,ファッションを5つのヒエラルキーに分類してみると恐らく以下の通りになるだろう。
(1)着用欲求
生まれたての姿=裸ではなく、一糸纏うことで社会的に孤立してしまうことを防ごうという欲求である。一般的に人類は,倫理的側面からその局部を覆うように何かを着用するという欲求に駆られている。一般的にではあるが。
(2)安全欲求
非着用面積の大きさに伴って外傷のリスクは上昇することは想像に容易い。例えば,パンツ1枚で富士登山を行うよりも,夏場には夏場の,冬場には冬場のそれぞれに適応した衣類を着用することが様々なリスクを低減させるポイントとなる。
そうしたリスク(この場合は危険性)を低減させるといったことを目的として衣類を着用しようとする欲求がファッションの安全欲求である。最高気温が5℃であるならば,重衣料にダウンジャケットを採用するのはこうした欲求に基づいている。
(3)社会的協調性の欲求
ファッションの安全欲求を満たした後で,ある集団に所属するための欲求が発生してくる。ユニフォームなどはその最たる例であり,集団に所属しているという感覚を統一された衣類によって担保しているのである。
日本において,多くの社会人がスーツを着ている理由も,他者が「社会人はスーツを着ているものである」という社会的協調性を根底に持つバイアスをもって自分を評価しているということを認識しているからである。そういえばピーター・ティールはかっちりとスーチングしたVBの社長とは関わりたくないとか言っていた。
ビジネス関連に関わらず,集団は一定のファッションボーダーを有していることが多い。例えば,Safariを愛読している集団においてはメンズノンノを愛読しているような個人は淘汰される。サファラーという集団に属そうと思うならば,Safariを愛読して,尖ることなくファッションを合わせることが大事なのである。
(4)他者承認欲求
社会的協調性に対する欲求を満たすと,ある集団の中で自分を価値のある存在として認めてもらいたいという欲求が発生する。この欲求を満たすと,集団の中ではそのリーダーとして認識されることが多い。俗に言うファッションリーダーはこの欲求を満たしている人たちのことを指すのである。
GENKINGはユニセックスな集団の中で,この欲求を満たし,さらには「ニューキャマタン」という新しい集団を作り上げてそのリーダーへと成り上がった。
(5)自己実現欲求
ファッションの他者承認欲求を満たしたものはすべて等しくファッションの自己実現欲求を満たそうとする。ファッションリーダーは自分のスタイルが集団にムーブメントを起こすことに飽き足らず,常に自分の求める高みへと挑戦し続ける。それは終わりのない自己承認欲求と同義であり,彼らの試行錯誤はより下位層の欲求を満たそうとする人々へと伝播していくのである。
以上,ファッションの欲求を5階層に分類した。このカテゴリーはさらに大きな概念でグルーピングすることが可能で,(1)から(2)までをファッションの生理的欲求,(3)はファッションの社会的欲求,(4),(5)をファッションの実現欲求とすることができる。
と,まあ1対1で対応させることができたものの,これが何になるのかなんて考えてもいないし。ただただ,暇をつぶすことができたという僕の欠乏欲求を満たすためのエントリーであった。
参考文献
*1 Maslow's Hierarchy of Needs,
http://www.simplypsychology.org/maslow.html (2016/11/29アクセス)