服飾方法論

ライフスタイルを包括的に考える

【トレンド】たまには,ウィメンズ

たまにはウィメンズのトレンドを触れてみるのもいいかなと思った。今年の秋冬,ウィメンズの1つのトレンドとしてはマスタードカラーが挙げられていた。まあ日本人なら辛子色ってところ。確かにベージュや薄めのモカのような秋冬の重衣料のキーカラーとも相性が良くて,馴染みやすさゆえに取り入れやすいカラーではあった。そんなはずなのにマスタードカラーの流行は本格的な冬を迎えるにあたって,衰退の道を歩んでいったように思う。何故だろうか。

結構な数の人が表面的に理解しているかとは思うけれど,ウィメンズの流行は,メンズのそれと比べて,極めて単発的というか特異的というか,瞬時的であることが多い。とりわけマスタードカラーは言うまでもなく瞬時的であった。秋冬のトレンドとして提案されていたはずなのにそれは実は秋のトレンドであった。

実りの秋と言うけれど,歴史的に見ても秋に旬を迎える果実や食物は特に豊富で,市場に出回る可食的な何かは秋にとりわけ多くなる。なんだかんだいって秋刀魚とか,無花果,柿は有名だけれど,鰻だって秋が旬。まあ,食べ物の旬が秋だからウィメンズの旬がどうこうという話をしたいわけではないからどうでもいいけれど。実際に秋とされる時期,大体9-11月はファション業界に於ける実売期ではないし。

それじゃあなんで秋に「秋冬のトレンド」と謳われたものがこうも瞬間的に衰退するかということだけれど,それは恐らく秋冬のトレンドの導入部分が冬のスタイリングまで視野に入れていないからだと思う。ちょっと主観的になってしまったから,補足すると,秋冬のトレンドとして紹介した任意のトレンド,今回で言うところのマスタードカラーというのは,実売期,すなわち冬に確実に売れるものと組み合わせやすくしかも新しいものが提案されるということ。ファション業界でトレンドをセットしている人々は,実売期に何が売れるのか,トレンドどうこうの議論以前にわかっているし,消費者がすでに持っている,言い換えれば消費者のクローゼットの中にある重衣料を予想できているから,それと組み合わせたら素敵に,ファッショナブルになりそうな何かを提案しているということ。先の例に沿って,食べ物で考えてみると,冬には温かいものが食べたくなって,鍋料理が盛んになると思ってるから,冬までのつなぎとして,秋はキノコが旬!とか適当なことを言っておけば実売期の前でもある程度の売り上げを保証できるってこと。万が一それが旬でないとしても。

でないと言われたらそれを買う気にはならなくなるのと一緒で,ファッション業界では,仮にセッターが旬であるかどうかすなわちトレンドであるかどうかを明示しなくても消費者がそれを判断して,購買行動に示してしまうから,今回はマスタードカラーが驚くべき速度で衰退していった。秋の時点では,確かに自分が今持っているモッズコートにマスタードカラーのニットを合わせればトレンディな着こなしになるな!とか思わせるのだけれど,実際のところそれを実行する人は少ないし,セッターもそれを狙っていない。どのファストファッションブランドでもマスタードカラーの重衣料が少なく取り扱われていたことがその証拠とも言える。

トレンドがめまぐるしく変わって,メンズのそれとは違うからどうこうとか言っている間はまだまだ未熟で,結局のところセッターが継続的に女性を犠牲にするために単発的で瞬時的なトレンドを提案しているということに気付かなければ,女性はずっとファッションヴィクティム。

が言いたいかっていうと,定番を抑えて毎年似たようなコーデになっている女性はそれを恥ずかしく思う必要はないし,それを男性がトレンディに評価することは許されないってこと。