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服飾方法論

ライフスタイルを包括的に考える

UNIQLOの業績が悪化しつつあるらしい。一つ心当たりがある

toyokeizai.net

 数多くのアパレルブランドは昨シーズン(2015-16AW)の売り上げが喜ばしくなかったらしい。打撃を受けたアパレルブランドは口をそろえて「暖冬」が原因であったと仄めかしている。リンク先を見れば明らかな通り,UNIQLOも表向きには暖冬という気象的条件を根本的な理由であると仮定していた。

 確かに,暖冬であれば最も単価の高い重衣料,例えばダウンジャケットやロングコートなどが売れにくくなるため,消費者一人当たりの単価が小さくなってしまうことは間違いない。何より,重衣料が主役を飾るAWの実売気にそれが売れないということは収益も大きくならないことは明白である。ただでさえ重衣料はTシャツやシャツなどの軽衣料と比べてコストが大きい。こうしたこともあってアパレルブランドが軒並み打撃を受けたと表明するのは,まあ不自然なことではない気がする。

 それでもUNIQLOが低迷していることには一つ大きな心当たりがある。

 

  UNIQLOはターゲットのインサイトを把握できていない。

 

ということである。UNIQLOはその性質的にファストファッションブランドというよりはメーカーに近い。というのもUNIQLOが「日本人」もしくは「日本国内で服を着る人」をターゲットに選定していたからである。これによってUNIQLOの服は,老若男女を問わないデザイン,サイジングで展開されてきた。このことが逆に,あまり服に気を使わない人々(ここではトレンドを追い求めない,それこそ服は着ることに意味があると考える人々ということ)こそUNIQLOのメインターゲットにした。UNIQLOがフリースで一世を風靡してから長く時間は立つが,そのメインターゲットは今もUNIQLOから離れていないのである。それにも関わらず,UNIQLOはトレンドを意識した服作りに励もうとしてきた。コンフォートな素材,シルエットで展開してみたり,デニムを猛烈にプッシュしてみたり,スポーティミックスなスタイルを提案してみたり。でもそうしたキャンペーンはメインターゲットの関心には刺さらない。副次的に,あるいはファッションの知恵としてUNIQLOを利用するような,メインターゲットと比べて幾分マイノリティーな消費者にとって,そうしたマーケティングキャンペーンは刺さったかもしれないが,圧倒的大多数を誇るメインターゲットにはかすりもしなかった。彼らはむしろ,街中でスウェットパンツを着ることには抵抗があるのだ。ここをはき違えた上に,メインでない新たなUNIQLOのターゲット:副次的にUNIQLOを利用する消費者たちにスポットを当ててしまったことで,商品数は増加し,個々の商品が持つ特性を上手にプレゼンすることが出来なくなったため,UNIQLOは業績予想を何回も下方修正する羽目になったということである。

 UNIQLOに求められているのは未だに「生活必需品」としての服であり,それは機能的に前衛であるエアリズムとか,ビジネス用のシャツとか,ベーシックなニット製品であって,好きなデザインで作れるTシャツとか,イージーパンツとかではないのである。経営陣の力不足だけではなく,実はブラック企業であるというネガティブなイメージなどが積み重なって,これからも業績予想は下方修正されていくと思う。一つだけアドバイスできるならば,初心に帰ってベーシックに服を生産しろということ。UNIQLOファストファッションブランドではないのだから。