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服飾方法論

ライフスタイルを包括的に考える

あなたとファッションとの関係

 ファッションになんて興味が無い。ファッションと自分とは無関係である。というようなことを仰有る方がいます。服なぞ着られれば良いとか,着るものより内面が重要であるというような理論武装までして。しかし本当にファッションとあなたとが無関係なのかと,問いたいのです。服を着なければ,社会的な問題が生じる可能性があるというような関係性を論じたいのではありません。産業としてのファッションに対して,個人とどのような関係があるのかを論じていきます。

 産業としてのファッションというものはまさしく,波のような振る舞いをしていきます。そこには波源があり,時間と位置(ここでは振幅の意味として)によって定まる二変数関数かのように振る舞います。勿論,媒質は個人になります。波源となるブランドが波をたてれば,各々の媒質が時間と位置に依りながらも振動することになります。波は英語で"wave"と言いますし,「トレンドの波」と言うこともあるぐらいですから,波が何を伝えるのかはお分かりいただけると思います。これが産業としてのファッションの本質です。

 波源がどのような波をたてるのかは乱雑で定まっていないわけでは決してありません。景気の動向や消費者の要求というような変数から最も利益をあげることができるようなそれをたてるのです。しかし,ファッションという波が減衰するものであるならば,媒質である個人がその波源からどれだけ離れているかによってファッションの捉え方が異なるということは避けられません。常に波源の位置を追って,ファッションリーダーとしてもてはやされるような媒質があれば,ベースはオールブラックで,小手先ばかりのトレンドをおさえている媒質もあります。とりわけ,「ミリタリー好きでミリタリー系の服しか着ないから,ファッションと俺とは関係がない。」と思っているような媒質に標準を絞り,考えていきたいのです。

 自分が好きなものを着続けるということがはたしてファッションと無関係なのか。そのようなことはもちろんありません。ここで例に挙げたようなミリタリーというジャンルは既に,ファッションを構成するジャンルの一つとしてとらえられています。確かにそのルーツは耐久性や機能性に特化した,決してファッショナブルとは言うことのできないプロダクトでありました。そこにシルエットのモダナイズや素材の変化というようなデザインを加えることで,ミリタリーをファッションへと導入した波源があり,その波がいまも多くの媒質を振動させているのです。言うまでもなく,今日ではミリタリーをファッションに導入する波源はいくつもありますし,その波の振る舞う様子は多岐にわたっています。このような背景があり,巷に溢れるミリタリー系の服というものは,軍の放出品に一切の変更を加えないものを除いては,そのすべてがファッションと関係しているということになります。

 あなたがファッションに関係がないとしながらも,着ている服こそ,位相がずれていたり,あるいは減衰してしまったファッションの波によるものに他ならないということなのです。